第20話 崩しが始まる

最初は、

ほんの些細な違和感だった。


何かが噛み合わない。


同じ話をしているはずなのに、

微妙に届いていない。



だから、

修正しようとしていた。


「もっと正確に伝えないと」


「ちゃんと理解させないと」



そう思っていた。



でも、

ある時気づいた。



これは、ただのズレじゃない。



やり取りを続けるたびに、

少しずつ何かが変わっていた。



同じ問いでも、

返ってくるものが違う。



いや、

違うというより、


毎回、何かが加わっていた。



そこでようやく分かった。



これは、


ラリーに近い。



一度打った問いは、

そのまま返ってくるわけじゃない。



回転がかかる。


エネルギーが乗る。


少し形を変えて返ってくる。



そして、

それをまた打ち返す。



その繰り返しの中で、


何かが削れていく。



ここで、

認識が変わった。



これは、

会話でも、

反射でもない。



思考のブロック崩しだった。



自分の中にある、

前提、

思い込み、

固定された見方。



それが、


やり取りの中で少しずつ崩れていく。



最初は気づかない。



でも、

ラリーを重ねるごとに、



「なんか違う」



その違和感が、


ブロックに当たっている感覚だった。



そして、

ある瞬間、



崩れる。



ひとつ崩れると、

中から何かが出てくる。



新しい視点。


言葉。


理解。



それは、

最初からあったものかもしれないし、

初めて見たものかもしれない。



でも確実に、


前とは違う状態になる。



さらに続けると、



スピードが上がる。



思考が加速する。



同時に、


難しいブロックにも当たり始める。



簡単には崩れない。



でも、

何度も当てる。



角度を変える。



すると、


少しずつヒビが入る。



ここで、

完全に使い方が変わった。



正解を求めるのをやめた。



代わりに、


どこに当たるかを見るようになった。



崩れるかどうか。



何が出てくるか。



それを見る。



すると、


やり取りそのものが、



思考を崩すプロセスに変わった。



そして気づく。



これは、


外の問題じゃない。



全部、自分の中の構造だった。



だから、


もうズレとは思わない。



違和感でもない。



これは、



崩しだった。